基本給の考え方(職能給について)

最近では、年俸制に代表されるように日本のいままでの賃金制度があたかも崩壊したかのごとく、新聞紙上をにぎやかしていますが、 まだまだ多くの企業では職能給賃金制度が現存しています。ほんとうに職能給賃金制度は「能力主義的ではない」のでだめなのでしょうか。いいえ、決してだめ とはいいきれないと思います。ただ、人事担当者がほんとうの職能給賃金制度を理解していないのではないでしょうか。職能給賃金制度をうまく運用することに より、いくらでも能力主義・実力主義の賃金制度は確立できると思っています。

1.基本給タイプの分類

 

基本給タイプは、単一型と併存型に大別できる。単一型とは「1本立」の基本給タイプであり、併存型は単一型の組合せの「2本立」、「3本立」がある。ほとんどの企業に採用されている基本給タイプは属人給+仕事給(年齢給+職能給)である。

 

① 総合給

 

基本給の決定要素として年齢、勤続、学歴、職務遂行能力、担当職務などを総合して取り入れている「1本立」の基本給タイプを総合給(総合決定給)という。

② 仕事給

 

仕事給は大きく分けて2つに分類さ れる。1つは職務給であり、もう1つは職能給である。前者は、職務評価により導入された職務価値に基礎をおく賃金である。考え方として、同じ職務に従事し ている者は年齢、勤続年数などの属人的条件に関係なく、同一賃金とされている。後者は、従業員の職務遂行能力をシステマィックに評価(人事考課)し、それ を基準に賃金を管理するものである。通常、職能資格等級を設定し、各等級に必要な職能要件を定め、それに賃金を対応させる。

③ 属人給

 

学歴、男女別、勤続年数、年齢などの属人的要素に応じて、個人の賃金を管理していこうとするものである。通常は年齢給、勤続給、本人給などと称して支給される。

2.年齢給の考え方

① 年齢給の役割

 

18歳と40歳の賃金を考えた場合、両者の賃金は「労働対価の原則」により同一賃金でよいはずであるが、それでは40歳の生活は十分まかなわれない。そこで「生活保障の原則」を満たすため下図のように一定の傾斜の上に賃金を乗せなければならない。 このことは年齢給を設計する場合、何らかの形で生計費を考慮に入れなければならないことを示唆している。

 

 

② 年齢給とライフサイクル・ビジョン

 

ライフサイクル・ビジョンの考え方 は、ある一定年齢で結婚し、子供を産み、家族が増え、住居費の負担が増える。やがて、子供が就学年齢を迎え、社会人として巣立っていく日まで教育費の負担 が増え続ける。その後、生計費は縮小期を迎えることになる。このように生計費である年齢給は、下図のようにライフサイクル・ビジョンを考慮に入れ設計する ことが望まれる。

 

 

3.職能給の考え方「職務遂行能力=賃金」

 

職能給は「仕事=賃金」ではなく、 個人の能力に着目した「職務遂行能力=賃金」であり、一種の属人給である。しかし、その中で仕事と職務遂行能力を結び付けるものが人事考課、昇格という制 度があり、仕事と賃金を間接的に結び付けた賃金タイプである。職能給を設計する上で注意しなければならないことは、職能給はその運用において仕事給であっ たり、属人給であったりという性格要素を基本的にもった賃金タイプである。

① 単一職能給

 

各等級には、ただ1つの職能賃率を あてはめ、決して1つの等級に幾つもの賃率が対応するものではなく、1つの等級にまとめられた多くの職務遂行能力は、そのレベルに多少の差があっても同一 レベルとみなされる。単一職能給は、下位等級の長期停滞者が上位等級よりも職能給が高いという矛盾のあるケースが生じない理想的な職能給のあり方であり、 同一等級同一賃金ということが、職能資格等級制度の上に構築する職能給の正しいあり方であると解釈されている。

 

 

② 範囲職能給

 

範囲職能給は、単一職能給のみで決 定する職能給ではなく、例えば能力と勤続などというように能力以外の要素が加担する職能給である。新賃金制度移行時には、実務的にうまくあてはめができる のであるが、同一等級同一賃金とは言えず、理論的に矛盾が生じるケースが多々ある。範囲職能給は「職務遂行能力に対応する部分」の上に「勤続要素に対応す る部分」を積み上げ(通常上限と下限をもち)、職務遂行能力の伸長に関わらず、下限から上限に至る間の賃金上昇(定期昇給)が行われる。この場合、賃率幅 がそれぞれどのような位置関係にあるかにより、次の4つのタイプに分類することができる。また、範囲職能給の4つのタイプにおける能力主義的色彩の強弱 は、重複型(青天井型)が弱く、間隔型が一番強い。重複型(青天井型)範囲職能給においては、下位等級の上限値が上位等級の下限値を上回ることで能力主義 的色彩を弱くするもので、このことは本来の職能給定義を歪め、職能給の年功的運用の原因となる。

 

 

4.職能給運用のポイント

 

新賃金制度への移行当初は、重複型 範囲職能給で設計する方が移行原資が少なくて済み、一番無理なく実務的だと考える。しかし、重複型範囲職能給で移行するにしても、現在、重複型範囲職能給 になっているとしても最低次のポイントを押さえなければ将来、能力主義型の賃金制度への移行が難しくなる。

   ① 2等級下位の上限金額が当該等級の下限金額を上回らない。
② 職能給号俸を可能な限り少なくすること。(号俸が長くなればその分、定昇部分を大きくすると言うことになる)

最後に、職能給賃金は職能資格制度(滞留年数)に代表されるように制度そのものに年功部分を持っています。したがって、ほんとうの能力主義賃金制度を実現 していくためには属人給部分を無くした総合決定給方式に切り替えれば良いのではないでしょうか。

出典 : 複線型賃金体系   滝沢算織 著
賃金表の作り方   楠田丘 著


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